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名古屋地方裁判所豊橋支部 昭和44年(ワ)126号 判決

主文

原告らの請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

一、請求の趣旨

被告山下光一は別紙第一目録記載の土地につき、被告山下春之は別紙第二目録記載の土地につき、原告ら及び被告らがそれぞれ各五分の一の持分を有する旨の相続による共有登記手続をせよ。

訴訟費用は被告らの負担とする。

との判決を求める。

二、請求の趣旨に対する答弁

主文同旨の判決を求める。

三、請求の原因

(一)  原告ら、被告山下光一、同山下春之の夫亡山下孝二(昭和三九年九月六日死亡)は、昭和三四年五月二六日に死亡した訴外山下辰二の子である。

そして被告山下春之は訴外亡山下孝二の財産を同人の死亡により相続した。

(二)  亡山下辰二は生前別紙第一目録記載の土地(以下第一土地という)を所有していた。

しかし同人は昭和二五年五月一二日被告山下光一に対して第一土地を真実贈与する意がないのに税金対策上贈与名下に所有権移転登記を経由した。

したがつて右土地は亡山下辰二の相続財産であるから、原告らと被告らは各五分の一宛の共有持分権を有するものである。

(三)  亡山下辰二は生前の昭和二八年七月三一日頃訴外杉江保二から別紙第二目録記載の土地(以下第二土地という)を買受けた。

しかし、亡山下辰二は税金対策上被告山下春之の夫亡山下孝二の所有名義に売買を原因として所有権移転登記を経由した。

したがつて右土地も亡山下辰二の相続財産に属するものであつて原告ら及び被告らは各五分の一宛の共有持分権を有するものである。

(四)1. 仮に第一土地を亡山下辰二が被告山下光一に贈与したものであるとすれば、右は遺留分権利者である原告らに損害を加えることを知つてなされたものである。

2. また第二土地について、亡山下辰二が前記訴外杉江保二から買受けて亡山下孝二の所有名義とした行為が、右土地を亡山下孝二に贈与する意思でなされたものとしても、右は遺留分権利者である原告らに損害を加えることを知つてなされたものである。

3. よつて原告らは被告らに対して、昭和四四年六月二〇日に被告らに送達された本件訴状によつて遺留分減殺の意思表示をなした。

(五)  そこで原告らは被告らに対し、第一、第二土地の共有持分権にもとづき、もしくは遺留分減殺請求として請求の趣旨に記載した判決を求める。

四、被告山下光一の請求の原因に対する答弁及び抗弁

(一)  請求の原因(一)の事実は認める。

(二)  同(二)の事実中亡山下辰二が生前第一土地を所有していたことは認めるがその余の事実は否認する。

(三)  被告山下光一は亡山下辰二から昭和二五年五月一二日第一土地を贈与されたものである。

(四)  請求の原因(四)1.の事実中第一土地が原告らの遺留分の算定の基礎となる財産となるとの主張を否認する。右訴外人も被告山下光一も、第一土地が贈与された当時、遺留分権利者に損害を加えることを知つていたことはない。右訴外人は昭和二二年九月二日第一土地を訴外鈴木英二から買受けたが、その買受資金は被告山下光一が兵役時代に訴外亡山下辰二に送金していた金員と、同被告が昭和二一年五月頃復員した後、父である右訴外人と共同で材木業を営んで得た金員をこれにあてたものである。

したがつて第一土地の右贈与は右訴外人が、実質的には同被告の金員で買受けたものであり、第一土地の実質上の所有者が被告であること、同被告が主体となつて材木業を経営すること等を考えた結果なされたものなのである。

五、被告山下春之の請求の原因に対する答弁

(一)  請求の原因(一)の事実は認める。

(二)  同(三)の事実中第二土地が訴外杉江保二から亡山下孝二に所有権移転登記が経由されたことは認めるがその余の事実は否認する。

被告山下春之の亡夫山下孝二は昭和二八年七月三一日頃訴外杉江保二から自己の資金で第二土地を買受け、右亡山下孝二の死亡により、被告山下春之が相続により右土地の所有権を取得したものである。

また、原告山下光義は名古屋地方裁判所豊橋支部昭和四一年(ワ)第一七五号事件の証人として供述したとき、第二土地が被告山下春之の所有であることを認める旨を証言しているのである。

したがつて第二土地は被告山下春之の所有に属するものであつて、亡山下辰二の相続財産に属するものではない。

(三)  同(四)2.の事実は否認する。

右のように第二土地は遺留分の算定の基礎に入らない物件であるから、原告らのこの点に関する主張は理由がない。

五、被告山下光一の抗弁に対する原告らの答弁

抗弁事実は否認する。

六、証拠関係(省略)

(別紙)

目録(第一)

豊橋市下地町二丁目四九番地

一、宅地 壱参参・弐五平方メートル

同所

家屋番号四九番

一、木造木皮葺平家建居宅 壱八・五壱平方メートル

一、木造瓦葺平家建居宅 五八・六四平方メートル

一、木造瓦葺平家建物置 五・五九平方メートル

目録(第二)

豊橋市下地町一丁目壱八番

一、宅地 壱二八・六九平方メートル

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